先日、誕生日を迎え二十歳になりました。私がこのキャンペーンに初めて参加してから10年の月日がたちました。後半の5年はスタッフとして参加させて頂いたのですが、改めて振り返ってみると様々な出会い・思い出が脳裏をかすめます。そしてこの数々の出会いこそ、今の私を形作ってくれたのだと確信しています。
今回は10年の節目ということで、今年4月に、第1回のイベントを行った熊本県の阿蘇久木野村と記念樹のクスの木を植えた神戸に行きました。阿蘇の大地を久々に踏みしめ、私は当時と同じ景色を見ながら、あの時この場所にいた自分と今の自分を重ね合わせ、様々なことに思いを馳せていました。
第1回は神戸震災で両親を亡くしたこどもたちと一緒にホームスティを体験しました。久木野村の人々は変わらぬ温かい笑顔で迎えてくれ、当時の思い出を懐かしそうに語りながら、心温まるひと時を過ごしました。あの夏からこの10年の間に里親の方々とこどもたちの間にそれぞれのストーリーがあったことを知りました。中には、本当に震災孤児をひきとって育てたいと申し出た里親もあったといいます。
神戸に行った際も、10年前に「夢みるこども基金」の記念樹として植えたクスの木を神戸の吉田綾香ちゃん姉妹と見に行き、見上げるほどの高さになったクスの木を見て10年の月日の長さを感じました。
ホームスティで一緒だった神戸の綾香ちゃんとは、イベント以来文通を続けてきました。正直、私は10年前のホームスティで綾香ちゃんとまともに話した記憶がありませんでした。そして、彼女の笑顔も見た記憶がありません。でもそれは、本当に当たり前のことだったと今更ながらに気付きます。私は彼女の地獄の苦しみを何も理解していませんでした。
しかし、彼女は今はしっかり前を見て笑っていました。母の意志を継ぎ、保育士という立派な仕事をこなしている彼女を頼もしく思いました。
第10回イベントのこの日、見覚えのある顔を見つけては話しかけ、本当に久々の再会を喜び合いました。このつながりは不思議な感じがします。学校の友だちともただの知り合いとも違う ・ ・ ・まるで遠い昔の自分に再びあったような気持ちがしました。10年前のあの日あの時、確かに同じ場所にいて同じ時を過ごした仲間 ・ ・ ・。過ごした時間は一瞬でも、一緒に一つの物を作り上げたという思いは永遠に消えないものです。そしてまた、参加した期は違っても、この「夢みるこども基金」を通じてつながっている仲間、という意識が皆の胸に自然と芽生えているのを感じました。
この日は神戸の綾香ちゃん春菜ちゃん、阿蘇の里親一家の皆さんも駆けつけてくれ、10年前阿蘇で一緒にホームスティをしたメンバーが、再び全員揃って再会することが出来ました。
あの当時は、皆好きに夢を語り、希望に満ちた目で夢を追いかけていたこどもたち。その子たちが今は社会人や大学生となり、本当の自分の夢に向かって自分の力で夢を切り開いていっています。ある子は教師、ある子は看護師 ・ ・ ・他にも様々です。あの頃夢見ていた夢とは違っているかもしれません。中には夢が挫折し、違う夢を歩む決意をした子もいることでしょう。でも私はしっかりと目に焼き付けました。保育師や教師になった友人たちの、本当にうれしそうで充実感に輝いた顔を。10年前、いきいきと希望に満ちた顔で夢を語っていたこどもたち。あの頃と輝きの色は違うけれど、また同じように、今度はまっすぐに、迷いのない目で前を見据えている友人たちの姿を、互いにはっきりと確認し合いました。
人の頑張っている姿というものは本当に心に響くものです。アテネオリンピックで数々の活躍をされた選手の方々。彼らの懸命な頑張りに、なぜ私たちが感動するのでしょう。それは「夢や目標を持ち、それをあきらめずに継続していく心」を自分の全てで表現しているからだと思います。そして彼らのほとんどが挫折を経験し、それを乗り越えてきた人たちです。生きる希望や目標を見つけることがどんなに大切なことかを、彼らは自らの努力で私たちに教えてくれています。
私も進路に悩み、自分が何をしたいのか分からなくなったときがありました。そのときの私を救ってくれたのが「夢が実現することへの喜び」でした。10年前、たった一人のこどもに過ぎない私の作文に託した小さな夢を、かなえてくれたこのキャンペーン。空想の世界でしかなかったその夢を、様々な方々のご協力で現実の世界に提示してくれたときの喜びは今でも覚えています。小さな自分の願いをこめた夢が認められたような気がしたのです。それがこどもたちにとってどんなにうれしいことか、私がよく知っています。
そのときのことが、自然と私に新たな夢をもたらせてくれたのです。私はこのキャンペーンから二度も夢をもらいました。一つ目は小学生だった私の作文の夢を本当に実現してくれたこと、二つ目は小さなこどもたちの願いを、未来に向けて継続的に手助けさせていただく側になったこと。そして大人になればなるほど、日本歯科医師会の方々を始め、こども基金のスタッフの方々がどんな犠牲を払って、私たちこどもの夢をかなえようとして下さったのかを知りました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
こどもたちの自由に夢を見る心を育て、そして今度は自分の力で夢を切り開く力を育み、その夢から新たな夢を生み出し、いつまでも夢を追い続ける心を築くこと。それがこの「夢みるこども基金」の根底にあるものではないでしょうか。夢に向かってがむしゃらに突き進んできて、しかし、一度立ち止まって自分の歩んできた道を振り返ってみる?。私はこの「夢みるこども基金」が、立ち止まって自分をもう一度見つめなおす場所であればいいなと思っています。ここが私たちの夢の「原点」であるということです。
私がこれから大人としての道を歩んでいく中で、一番大切にしたいのが「人との出会い」です。偶然の出会いもあれば運命の出会いもあるでしょう。全てが「必然」と「偶然」から成っており、人はそういう出会いを繰り返しながら、自分という人間を確立させ、成長させていくものだと思います。中でも私は「偶然」の出会いがもたらすものはすごいと思います。 こどもキャンペーンとの出会いも今となっては運命だったのかなと思うときもありますが、これも偶然が生んだ出会いだと思っています。第10回というこの場に参加することで、また新たな出会いが生まれました。夢という一つのことを通じてつながっている私たちです。これからもどんどんこの場所でいくつもの出会いが繰り返され、輪が広がっていくことでしょう。