生命をあずかる盲導犬たちの現状

 盲導犬をテーマにした映画やテレビを見て、その素晴らしさに感動した人たちも少なくないでしょうが、視覚障害者たちの生命をあずかる盲導犬たちが、極端に少ないことは余り知られていません。日本では、視覚障害者42万人、うち全盲の方が12万人で、盲導犬の貸与希望者が7,600人に対して、実働の盲導犬はわずかに850頭。いかに不足しているかがうかがえます。
 夢みるこども基金は平成13年4月、福岡市で開かれたこども会議で第7回のイベントが「バリアフリーの社会を作ろう」と決まったあと、こども会議のメンバーや事務局では、福岡県前原市にある福岡盲導犬協会訓練センターをお尋ねして、いろいろなことを学びました。
 まず子犬は生後45日で親や兄弟から離し、パピーウォーカー(子犬の里親)に引き取られ、約10ヶ月、里親に世話を受けている間に、人間との繋がり、人間に愛される喜びを知り、社会のマナーやルール、情操を身につけていきます。
  そして、満一歳になったとき、訓練センターに戻り、体調や性格をチェックされ、合格の可能性のある犬だけ訓練が始まります。
 さらに、半年から1年の訓練のあと、視覚障害者と犬が4週間、共同生活するための講習を受け、やっと盲導犬は使用者に手渡されるのです。といっても、訓練ではじかれ、合格するのはわずか4割。残りはペットとして引き取られたり、繁殖犬や、学校などで活動を理解してもらうための啓蒙犬として活躍しています。
 いまバピーウォーカーのボランティアが不足しています。パピーウォーカーは無報酬のうえ、エサ代など飼育にかかる費用が約10万円かかるうえ、労力も大変。それだけではなく、数か月後、やっと慣れた頃、犬と別れることになり、ほとんどの人が「あんな悲しい思いは二度としたくない」と、里親を敬遠してしまいます。それでも、同訓練センターには、いま30人のバピーウォーカーの希望登録があり、犬を育てるプロセスが得難い体験となっているようです。
 こうした盲導犬育成には、1頭あたりに200万円から250万円と多額の費用がかかり、その大半を県や市など自治体の助成金や企業、団体、そして個人などからの寄付金などで賄っているのが現実です。
 夢みるこども基金もこうした現実を学び、少しでも協力できれば、と盲導犬1頭の寄贈を決定しました。
 ユーザーと呼ばれる視覚障害者の生命をあずかり、日夜、頑張る盲導犬に対する理解は広がっているのですが、それでも無理解から来る社会の壁にぶち当たることも少なくありません。
 今回、「バリアフリーの社会を作ろう」のイベント実施を決め、会場を探していたとき、ある会場で「犬を会場に連れ込まれては困ります。(会場を)汚したり、爪で廊下を傷めたりしますので」と、会場使用を断られました。徹底した訓練と教育、しつけが施されたうえに、選び抜かれた盲導犬のことは、それなりに知られているものと考えていただけに、驚きと同時に怒りを覚えました。