はっくん1号贈呈式

「はっくん1号」のパートナーは主婦・脇崎恵子さん(福岡県筑紫野市)

こどもの頃から一人で電車に乗るのが「夢」

 盲導犬「夢みるこども基金・はっくん1号」の飼育者である福岡県筑紫野市、主婦脇崎恵子さん(41)の自宅は、私鉄の西鉄二日市駅から南へ約2キロ、天拝坂山麓に広がる新興住宅地。
買い物や、電車、バスに乗るのも、目の不自由な恵子さんにとって苦痛であった。「はっくん1号」と出会ってからは白杖が消え「新しい世界が広がった」という言葉に実感がこもっていた。

 恵子さんは、正確に言えば”中途失明者”。生まれたときから強度の弱視で、小学生のころの視力は0・1。度の強い眼鏡をかけても手元の物がおぼろげに見える程度。22歳のときに会社員の剛久さん(44)と結婚、二人の男子にも恵まれたが、視力は落ちる一方。26歳のときに網膜症を発病、全盲状態に陥ったという。一家から笑顔が消えたのもそのころだ。
 剛久さんと恵子さんは、市役所の紹介で盲導犬のことを知り、福岡盲導犬協会を訪れ相談した。

 3年前、同協会に盲導犬使用者の申し込みをし、テスト、訓練のあと、やっと「はっくん1号」を迎えることができた。その喜びを恵子さんは「こどもの頃から一人で電車やバスに乗るのが夢。はっくん1号は家族の一員で、一生のパートナーとして暮らしていきます。夢みるこども基金の善意に感謝しています」と語った。

 恵子さんは、昨年12月、福岡県前原市の同協会盲導犬訓練センターで約1年間、訓練された「はっくん1号」と顔を合わせ、一週間、合宿して歩行訓練などをした。その一日−JR前原駅。改札口、階段、列車が発着するホームでの実習を繰り返したが「はっくん1号」に落ち着きがなく、恵子さんも不安げ。指導の桜井昭生所長から「命令は声を大きく、はっきりと」「うまくいったらほめてやること」など、指導され、犬との信頼関係の大切さを教えられた。
 それから半年、「はっくん1号」は太り気味ではあるが、見違えるほどに落ち着き、恵子さんとの呼吸もぴったりで、かけがえのない『家族』の一員となっている。
 日本での盲導犬の歴史は浅く、昨年10月やっと「身体障害者補助犬法」が施行され、盲導犬や介助犬、聴導犬とともに、デパート、食堂、ホテルに入場でき、一定の条件をクリアすれば電車、バスにも乗車できるようになった。また、「クイールの一生」という話題作のテレビ放映などもあり、盲導犬への理解も高まってきている。

 しかし、福岡盲導犬協会の大山徳次郎常務理事によると、「確かに世間の理解は進んでいるが、外国と比べると入り口に過ぎない」という。盲導犬実数を見ると、米国約6000頭、英国約4000頭に対し、国内は927頭(3月31日現在・同協会調べ)と少ない。希望者(待機者)は約8000人以上という。

 適格犬の確保が難しいこともあるが、育成資金が不足し、すべて企業、団体、個人のボランティアに頼っているのが実情だ。訓練指導員の不足も課題となっている。大山常務理事は「このボランティアに一人でも多くの方が参加していただくよう願っています」と話している。